NYを去る前日、僕は再びグラウンドゼロを訪れた。
事件の記憶と追悼のためにと、最近になって特設展望台が公開されたのだが、僕は実はそれよりもっとビル倒壊現場に近い場所に、足を踏み入れさせてもらった。
「どうしても犠牲者の冥福を祈りたい」
無理とは思いながらそう懇願したら、警備員の一人が遺族用に設けられた見張り台に通してくれたのだ。
そして、信じられない景色が目の前に広がった。
"America under Attack."
再三再四ニュースで繰り返された言葉の意味が、一瞬にして伝わってきた気がした。
現場の外からの光景は幾度もカメラに収めてしまった愚直な僕だが、ここでは恐る恐る一枚だけ写真を撮った。
この目の前の光景は絶対に写真では伝わらない、そう知りながらも。
国連が寄贈した大きな看板があった。
世界地図を地に、事故の日付と世界各国の国旗がデザインされたものだった。
日の丸の横に、日本人のサインはまだ無かった。
「決してこの日を忘れない。」と僕は日本語でサインをした。
数多くの日本人も犠牲になっていることを、少しでも伝えたかった。
そしていつの日や、ここに本当のエピローグを書き込めるよう…